「大人のオモチャ」がブームだ。少子化による市場縮小を補いたい玩具業界の狙いに、競争社会の陰で趣味や癒やしを求める消費者がはまった格好。玩具売り場には高額商品や郷愁を誘う商品が並び、専門誌の創刊も相次ぐ。「ガンダム世代」より上で、60~70年代に少年時代を過ごした記者も無視できない状況だ。
手首に描いた「腕時計」に向かって命令すると、傍らのロボット役が従う。
記者の保育園時代にはやった「ジャイアントロボ」(67年度テレビ放映)ごっこだ――。
あれを赤外線リモコンで再現したのがTOSMAX(東京)の「RCオリジナル・ジャイアントロボ」(8925円)。高さ38センチの人形が前後進・旋回し、構えた指先の「ロケット砲」が光り、うなる。「下火の玩具業界を盛り上げるには、好きな物を好きに買える世代の興味を引かないと」と羽賀威一郎社長(39)。
手首に装着するリモコンが泣かせる。
小学校の半ばで「仮面ライダー」の放映が始まった(71年)。新しいライダーが登場するたびに遊び仲間が増えた――。
敵の秘密基地の象徴だったワシ形の壁飾りを壁掛け時計にしたのが(東京)の「ショッカー首領時計」(2万1000円)。正時になると、当時と同じ声優の声で首領の指令が下る。ネット通販限定で「目標は、日本を支える世代の秘密基地作り」と山本周史プロデューサー(38)。「首領の下に集い、あの頃のように夢を語り合おう。
時計なら家族の理解も得られるのでは」と話す。
中学校ではSF好きの仲間と「宇宙戦艦ヤマト」(74年度放映)の作品性を
語り合った――。
バンダイ(東京)が発売した350分の1のヤマトは全長77センチ。光や音で「波動砲」発射を再現する。この手のプラモデルでは異例の高額(4万7250円)だ。
どれも狙いは「30~40代男性」。これらが発売された今年は「ハイパーホビープラス」(徳間書店)や「クアント・グランデ」(ネコ・パブリッシング)など専門誌の創刊も相次ぎ、ブームはピークを迎えた感がある。
福岡市のヨドバシカメラ博多店玩具売り場でも昨年あたりから大人向け商品が目立つという。「明らかに自分用と分かる商品を買って帰る大人が増えた」と担当者。
オモチャ収集家で経済アナリストの森永卓郎さん(50)は「大人のオモチャ」が市場として定着したと見る。「少子化に苦しむ玩具業界の狙いは、金も時間もある団塊の世代と、仕事のストレスで癒やされたい働き盛りの世代。消費者側も家族で楽しむより、一人一人でちまちま遊ぶスタイルが主流になった。こうした流れは今後も変わらない」
朝日新聞
http://www.asahi.com/life/update/1227/SEB200712270007.html